日本では、戦後から現在に至るまで、住宅建築において「作っては壊す」を繰り返してきました。戦争を経て一面が焼け野原、という状態では、国民が雨風をしのげるように、たくさんの家を建てる必要がありました。そのような風潮の中では「住宅性能」がないがしろにされるのも無理ありません。
しかし、建物の価値や住宅性能を考えずに、住宅を建築しつづけた結果、「日本の木造住宅は、建築後、20〜25年で市場価値がゼロになる」という大問題を生み出しています。日本の住宅価値の減少は、諸外国と比べて異常に速く、海外ではむしろ「住宅は資産であり、その価値は歳月とともに上がっていく」という認識が主流です。
いま社会問題となっている「空き家」の増加も、戦後からの流れである「作っては壊す」という悪循環に原因があるのです。わたしたちの周りに空き家があふれているのに、「いつまで住めるか分からない」「大金を支払うだけの価値があるか分からない」から、中古住宅の購入は選択肢としてあがりにくく、結果、寿命30年の新築住宅を建ててしまうということになってしまうのです。
適切な内装、外装、設備の補修を行うことで、住宅の価値は回復し、向上します。第三者機関が住宅性能を客観的に審査する「住宅性能表示制度」もあります。これからの時代は、「良いものを作って、きちんと手入れし、永く大切に使う」ということが重視されることでしょう。永く使い続けたからこそ生まれる、独特のビンテージ感も魅力のひとつです。
100年暮らせる資産価値の高い住まいなら、たとえば30年後、子どもが独立して夫婦のライフステージが変わるときなど、家を適切な価格で販売・賃貸することができるため、その資金を元手に次の住まいの選択をすることが可能です。いくらデザインがすてきな家でも、いくら住み心地が良い家でも、地震で倒壊したり、故障が多かったら意味がありません。中古であっても、安全・安心の性能担保はもちろんのこと、新築同様の価値を感じられる住宅が理想的です。