足立 操
Misao Adachi
静岡ストックハウス流通促進協議会 委員長 ・ 全国工務店協会環境委員会 副委員長 ・ 静岡木の家ネットワーク 理事 ・ 株式会社足立建築 代表取締役
日本の木造住宅は築後20〜25年で市場価値がゼロになってしまうのが現状ですが、この住宅価値の減少は諸外国と比べて異常に速く、海外ではむしろ「住宅は資産であり、その価値は歳月とともに上がっていく」という認識が主流です。他国の方から、どうしてそんなに価値の下がるものに2,000〜3,000万円という大金を支払うのかと不思議に思われることも多くありますが、残念ながらその見解は正しいと言わざるを得ません。
こうした流れは、日本社会において戦後から現在に至るまで「作っては壊す」を繰り返してきたからにほかなりません。戦後の焼け野原から、たくさんの家を建てる必要があった時代の中で、住宅性能を後回しにされてしまってきたことは無理のないことです。しかし、その結果、こうした異常な状況を生み出してしまっており、住宅価値の減少による国全体の損失も計り知れません。
住宅は、適切な内外装、設備の補修を行うことで何度でも回復します。今後の社会においては、「いいものを作って、きちんと手入れし、永く大切に使う」ということが重要です。住宅性能の基準として、国の定めている「住宅性能表示制度」に基づく住宅であれば、耐久性やメンテナンス性なども確保されます。100年暮らせる資産価値の高い住まいなら、例えば30年後、子供が独立して夫婦のライフステージが変わるときなどに、家を適切な価格で販売や賃貸をすることもできます。こうしたことを、住まい手と私たち作り手がしっかりと理解し、将来を見据えて取り組んでいくことが大切なのです。
静岡ストックハウスの取り組みの目的は、「循環」を生み出すことです。住宅を循環させ、住まい手を循環させ、資金を循環させる。そのためには、まず大切なのはインスペクション(検査・診断)です。住宅に対してお客さまの判断できる基準を、地域の中に増やしていくことが重要で、その先に、安心して住みたい家を買う・売るということが実現していきます。地域で循環し続けられる、資産価値がきちんと残る住まいのために、作り手である私たちが一体となって取り組むことで、お客さま一人ひとりが住宅のことをしっかりと考え、判断できるきっかけを作っていきたいと考えています。
浜松信用金庫
The Hamamatsu Shinkin Bank
静岡ストックハウス流通促進協議会 加盟金融機関
浜松地域における将来的な人口減少や、産業構造の激変等に伴い、空き家の増加が社会問題化しています。また、若年層の所得は伸び悩んでいる状況にあるにもかかわらず、最近の住宅ローンは借入金額がおおむね増加傾向にあり、定年後も一定額以上の残高が残る住宅ローン利用者が多くなっています。良質な中古住宅やリフォーム市場が活性化すれば住宅ローンの返済負担を適正な範囲に収めることが出来るとの思いで浜松信用金庫では中古住宅購入やリフォーム資金に対して無担保商品から有担保の住宅ローンまで用途や金額に応じて最適な商品のご提案ができるよう努力しております。
また長寿時代の流れを汲んでご高齢の方々にとっても資金のご調達が可能になれば、例えば将来のお金を残しながら自宅をリフォームして豊かなセカンドライフを過ごすことも実現できるということで、平成30年1月から「はましんリバースモーゲージ型住宅ローン」の取扱を開始するなど、ご高齢の方々の課題解決やニーズにも積極的に対応してまいります。
今回「静岡ストックハウス流通促進協議会」に参画させていただいたのも地元の工務店、不動産業者、不動産鑑定士、設計・検査・履歴事業者などの皆さんとファイナンシャルプランナーや私ども金融機関も含めた異業種が集まり協力をして中古住宅の市場形成の仕組みづくりをすることが、浜松信用金庫としても「地域社会の発展に貢献する」という経営理念に直結するものであり、「地方創生の実現」という目標に沿ったものであると考えたからです。
今後も皆様の住まいと暮らしがより豊かになるように、中古住宅がより価値あるものになるように努めてまいりたいと思いますのでよろしくお願い申し上げます。
桑原 人彦
Hitohiko Kuwabara
静岡ストックハウス流通促進協議会 副委員長・静岡木の家ネットワーク 代表理事・株式会社桑原建設(マルベリーハウス) 代表取締役
これまでの日本の住宅の考え方は、スクラップ&ビルドで、30年くらい経てば新しい住宅に建て替えるという考え方が主流でした。こうした中、平成21年から長期優良住宅の制度がはじまり、品質の確保された住宅を建てて長く住もうという社会の流れが、少しずつできてきました。おそらくもう10年もすると、住宅履歴のしっかりとした中古住宅が出回るようになり、中古住宅の市場も少しずつ変わってくるでしょう。
そうした時代も見据えて、この遠州地域で基盤をしっかり作っていこうというのが、この静岡ストックハウスの取り組みです。私たちにとっても、住まい手のために作った住宅が、30年・40年・50年と世代を超えて住み続けてくれることは、なにより嬉しいことです。そうすることで、地域の中で価値のある住宅が循環し、魅力ある建物がしっかりと残っていくでしょう。静岡木の家ネットワークをはじめとする地域の関係者がしっかりと連携を作って、こうした魅力ある地域づくりに貢献していきたいと思っています。
山田 一輝
Kazuteru Yamada
静岡ストックハウス促進協議会 副委員長・全日本不動産協会 会員・不動産のマップス(株式会社マップス) 代表取締役
不動産が中古住宅として流通する際に、不動産業界では建物を見ていません。土地は相場がある程度ありますので評価額が出てきます。建物の価格は、近隣や周辺地域の中古住宅や新築分譲住宅の販売状況や過去の取引事例から土地+建物の総額を見比べ、今回の物件は総額いくらくらいだったら売れそうだから建物価格はこれぐらいだろうという感覚で決定しています。
不動産業者は無料査定を行っており、業者によっては査定額を簡単に出してくれる専用のシステムを利用しているケースもありますが、ただこれも正確なものではなく、個別の事情まで全て拾い上げ査定額を出してくれるものではありません。不動産業者の不動産査定は正直者がバカをみています。真面目に物件調査を行い、適正であろう価格を提示したところで、ろくに調査もせずに高い査定額を提示した業者にお客さまは売却の依頼をしてしまっています。自分の不動産が高い査定額になれば誰だって嬉しいとは思いますが、それは机上の空論。その金額で売れると決まった話ではありません。
不動産業者の査定額とは、この位の金額であれば売れるであろうという程度のものであり、高い査定額を出してくれた業者が必ず高い金額で売却してくれるというものではありません。よって高い査定額を提示する業者の狙いは、まずは不動産の売却依頼を取り付け、時期が来たら値下げをもちかければいいと思っています。結果、売却までに時間がかかったり、当初の提示額より大幅に下がり売却することとなったりします。買主のお客さまは、真剣に不動産を探されていますから物件を見る目は厳しいです。大手仲介業者の仲介物件だから、物件価格が高くても買ってもいいなんて思っている方はいません。買主は皆物件を見ています。
不動産を高く売りたいのであれば、これからは厳しい目の買主のお客さまが納得できるかたちの正攻法で進める必要があります。普通の人が人生の中で1番高い買い物が家、2番目が車と言われています。2番目に高い車、その中でも中古車業界では、ここ最近では物の見える化が進んできています。具体的には、走行距離から始まり、事故歴、外装の傷、内装の傷等々かなり詳細に表記された広告が見受けられるようになりました。よって同じ年式の車であっても、状態が良い物と悪い物では大きな価格差があり販売されています。
では家はどうだろうかと言うと、築年数、あっても大手ハウスメーカーです位の情報しかなく、物件の状態や維持管理について記載・公開されているものはまず見かけません。状況内容が分からないものには不安を感じ、また安い買い物ではないので躊躇してしまうのは当然の心理です。そこで家もインスペクション(住宅診断・建物状況調査)により情報を見える化し、場合によっては保証【瑕疵保険】が付いてくることにより、買主のお客さまは良い物は良いと判断し、価格差があることにも納得し安心して購入していけるようになります。また中古住宅ですから、完全完璧な状態を維持していなくとも経年劣化や多少の不具合があるのも当然です。リフォーム費用や修理費用等が見える事により、買主のお客さまの安心材料となるのです。
昨今、空き家が全国にも増えてきていると言われています。社会資源として空き家を捉え、それを社会として有効利用し住みたい人に住んでもらうことが必要だと思います。都会ではなく静岡県のような地方都市に住む良さの中の一つには、都会より住環境が良いという事があると思います。一人でも多くの方に、やっぱり我が家は良いなと感じて欲しいと思います。住まわれる方が楽しく人生を送ることができた家であれば、新築・中古を問わず、それはどんな家であっても自分にとってかけがえのない我が家になっていくのではないでしょうか。